就業規則の相対的必要記載事項とは?制度を設ける場合に必要な8つの事項

就業規則には、必ず記載しなければならない事項のほかに、会社で一定の制度やルールを設ける場合には、就業規則に記載しなければならない事項があります。

これを「相対的必要記載事項」といいます。

「相対的」と聞くと少し難しく感じますが、考え方はそれほど複雑ではありません。

例えば、会社に退職金制度がなければ、退職金について就業規則に記載する必要はありません。

一方、会社が退職金制度を設けるのであれば、その内容を就業規則に記載する必要があります。

今回は、就業規則の相対的必要記載事項について、具体的な項目と注意点をご紹介します。

相対的必要記載事項とは?

就業規則に記載する事項には、大きく分けて、

  • 絶対的必要記載事項
  • 相対的必要記載事項
  • 任意に記載する事項

があります。

このうち、相対的必要記載事項とは、その事業場で一定の制度やルールを定める場合には、就業規則に記載しなければならない事項です。

つまり、

制度を設けるなら記載が必要

と考えると分かりやすいでしょう。

労働基準法第89条では、相対的必要記載事項として8つの事項が定められています。

相対的必要記載事項は8つ

具体的には、次の8つです。

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金等・最低賃金額に関する事項
  3. 労働者に負担させる費用に関する事項
  4. 安全・衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰・制裁に関する事項
  8. その他、全労働者に適用する事項

それぞれ確認していきましょう。

1.退職手当に関する事項

会社が退職金制度を設ける場合には、就業規則に退職手当に関する事項を記載する必要があります。

例えば、

  • 退職金制度の対象となる従業員
  • 退職手当の決定方法
  • 退職手当の計算方法
  • 退職手当の支払方法
  • 退職手当の支払時期

などです。

退職金制度がある会社では、退職金の計算方法や支給条件などが従業員にとって重要な労働条件となります。

そのため、「退職金あり」とだけ記載するのではなく、制度の内容が分かるように定めることが重要です。

なお、退職金について別途「退職金規程」を作成し、就業規則の一部として扱う方法もあります。

2.臨時の賃金・最低賃金額に関する事項

ここには、退職手当を除く臨時の賃金等に関する事項が含まれます。

例えば、

  • 賞与
  • 臨時に支払う賃金
  • 最低賃金額

などです。

特に賞与制度を設けている会社では、就業規則や賃金規程などに賞与について定めることがあります。

ただし、賞与について規定する場合には、実際の会社の運用と規定内容が一致しているかを確認することが重要です。

3.労働者に負担させる費用に関する事項

会社が労働者に対して、一定の費用を負担させる制度を設ける場合には、その内容を就業規則に記載する必要があります。

労働基準法では、例えば、

  • 食費
  • 作業用品
  • その他会社が労働者に負担させる費用

などが対象とされています。

例えば、会社が制服代や作業用品などについて従業員に一定の負担を求める場合には、その取扱いを確認する必要があります。

4.安全・衛生に関する事項

会社が安全や衛生に関するルールを設ける場合には、その内容を就業規則に記載します。

例えば、

  • 安全衛生上守るべき事項
  • 作業上の安全に関するルール
  • 健康診断
  • 衛生管理

など、会社の業務内容に応じた規定が考えられます。

特に製造業や建設業など、安全衛生に関するルールが重要な事業場では、実際の業務内容に合わせて規定することが大切です。

5.職業訓練に関する事項

会社が職業訓練について制度を設ける場合には、その内容を就業規則に記載します。

例えば、

  • 職業訓練の対象者
  • 訓練の内容
  • 実施方法
  • 訓練を受ける場合の取扱い

などが考えられます。

すべての会社に職業訓練に関する規定が必要というわけではありません。

会社として職業訓練について一定の制度を設ける場合に、記載が必要となります。

6.災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項

会社が、労災保険による給付などとは別に、災害補償や業務外の傷病に対する扶助制度を設ける場合には、その内容を就業規則に記載します。

例えば、

  • 業務上の災害に対する会社独自の補償
  • 業務外の病気やけがに対する会社独自の扶助

などです。

ここで注意したいのは、労災保険そのものについて就業規則に記載するという意味ではないことです。

会社独自の災害補償や傷病扶助について定める場合が対象となります。

7.表彰・制裁に関する事項

会社が表彰制度や懲戒制度を設ける場合には、その種類や程度について就業規則に記載する必要があります。

例えば、表彰については、

  • 永年勤続表彰
  • 業績表彰
  • 功労表彰

などが考えられます。

一方、制裁については、

  • けん責
  • 減給
  • 出勤停止
  • 懲戒解雇

などの懲戒処分が考えられます。

特に懲戒については注意が必要です。

会社が従業員に懲戒処分を行う場合、就業規則に定めた懲戒事由や手続きなどが重要になります。

そのため、単に「会社が必要と認めた場合は懲戒処分を行う」といった曖昧な規定にするのではなく、会社の実情に合わせて具体的に定めることが重要です。

8.その他、全労働者に適用する事項

最後は、少し分かりにくい項目です。

労働基準法第89条では、前の項目に該当するもの以外でも、その事業場の労働者すべてに適用される定めを設ける場合には、その事項を就業規則に記載する必要があるとしています。

例えば、会社独自の制度として、

  • 福利厚生に関する制度
  • 社宅・寮に関するルール
  • 慶弔に関する制度
  • 特別休暇
  • 休職制度
  • 配転
  • 出向

などについて、全労働者に適用されるルールを定める場合があります。

この「その他」は非常に範囲が広いため、会社独自の制度を設ける場合には、就業規則への記載が必要かどうかを確認することが大切です。

「制度がなければ記載不要」という点がポイント

相対的必要記載事項で重要なのは、

その制度がなければ、必ずしも記載する必要はない

ということです。

例えば、

退職金制度がない会社

→ 退職手当に関する規定は原則として必要ありません。

賞与制度がある会社

→ 賞与について定める場合、その内容を就業規則等に記載します。

懲戒制度がある会社

→ 懲戒の種類・程度などについて記載が必要です。

会社独自の福利厚生制度がある

→ 全労働者に適用される制度であれば、その内容について就業規則への記載が必要になる場合があります。

このように、「会社にどのような制度があるのか」を確認してから就業規則を作成することが重要です。

相対的必要記載事項を一覧で確認

項目どのような場合に記載する?
退職手当退職金制度を設ける場合
臨時の賃金・最低賃金額賞与などの臨時の賃金等について定める場合
労働者の費用負担食費・作業用品などを労働者に負担させる場合
安全・衛生安全衛生について定める場合
職業訓練職業訓練について定める場合
災害補償・傷病扶助会社独自の補償・扶助制度を設ける場合
表彰・制裁表彰や懲戒制度を設ける場合
その他全労働者に適用する独自のルールを定める場合

労働基準法第89条では、この8項目について、制度等を定める場合に就業規則への記載を求めています。

就業規則は「実際の会社の制度」と合わせることが大切

相対的必要記載事項については、会社の実際の制度を確認することが特に重要です。

例えば、

「賞与を支給しているのに、就業規則や賃金規程に何も定められていない」

「懲戒制度を設けているのに、懲戒の種類や事由が十分に規定されていない」

「退職金制度があるのに、退職金規程が整備されていない」

といった状態になっていないか確認する必要があります。

就業規則は、単に厚生労働省などのモデルをそのまま利用するのではなく、実際の会社の制度や働き方に合わせて整備することが重要です。

まとめ

就業規則の相対的必要記載事項とは、会社が一定の制度やルールを設ける場合に、就業規則に記載しなければならない事項です。

主なものは次の8項目です。

  1. 退職手当
  2. 臨時の賃金・最低賃金額
  3. 労働者の費用負担
  4. 安全・衛生
  5. 職業訓練
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助
  7. 表彰・制裁
  8. その他、全労働者に適用する事項

「制度がある場合に記載する」という点が、前回の記事で取り上げた絶対的必要記載事項との大きな違いです。

就業規則を作成するときは、法律上の記載事項を確認するだけでなく、現在会社で行っている制度や実際の運用と就業規則の内容が一致しているかを確認することが大切です。

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